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大分地方裁判所 昭和40年(わ)139号 判決

被告人 佐藤広 外三名

主文

被告人佐藤広を懲役六月に、被告人平井兵吉、同高屋一を懲役二月に、被告人小出甚作を懲役四月に各処する。

ただし、本裁判確定の日より被告人佐藤広、同小出甚作に対し二年間、被告人平井兵吉、同高屋一に対し一年間、右各刑の執行を猶予する。

被告人佐藤広より金一三万円、被告人平井兵吉、同高屋一より各金一万円をそれぞれ追徴する。

訴訟費用中、国選弁護人後藤博に支給した日当分は被告人平井兵吉の、証人内田長栄に支給した分は被告人小出甚作の各負担とする。

理由

被告人等は大分県大分郡野津原町大字竹矢二、〇二七番地の一に事務所を置く、公共組合(公法人)なる世利川井路土地改良区の総代として、昭和三九年七月一五日施行された選挙において即日当選決定し、同年七月二四日より総代の職務に就き、同日施行された同土地改良区の公共的業務に従事する理事監事の総代会における公選に際し、その選挙権を有していたものなるところ

第一、被告人佐藤広は

(一)(1)  同年七月二四日午前一〇時三〇分頃、大分県大分郡野津原町大字竹矢字矢の原所在中部小学校講堂において、同土地改良区理事に事実上立候補していた分離前の相被告人初川賢哉より、自己に投票され度い旨請託を受け、その報酬として供されることを知りながら、現金五万円の供与を受けて、総代である自己の職務に関して賄ろを収受し

(2)  同日時頃、前記中部小学校講堂附近において、同土地改良区理事に事実上立候補していた分離前の相被告人佐藤篁より、森永光を介して、自己に投票され度い旨請託を受け、その報酬として供与されることを知りながら、現金五万円を受取つて賄賂を受け、右理事選挙の投票をなすと共に、総代である自己の職務に関して賄ろを収受し

(3)  同日時頃、前記中部小学校講堂附近において、同土地改良区理事に事実上立候補していた分離前の相被告人工藤長谷丸および被告人小出甚作より右工藤に投票され度い旨請託を受け、同月三〇日頃の午後二時頃、同町大字太田四九三番地なる右工藤長谷丸方において、その報酬として供されることを知りながら、現金五万円の供与を受けて、総代である自己の職務に関して賄ろを収受し

(4)  同年七月一六日午前六時頃、肩書自宅において、同土地改良区の監事に事実上立候補していた分離前の相被告人佐藤東より、自己に投票され度い旨請託を受け、その報酬として供与されることを知りながら、現金千円を受取つて賄賂を受け、右監事選挙の投票をなし

(二)(1)  同年七月二四日午前一〇時三〇分頃、前記中部小学校講堂において、被告人平井兵吉に対し、右理事選挙に際し、前示初川賢哉に投票され度い旨請託をなし、同日午後一時頃、同町大字竹矢字竹の内通称泉橋附近路上において、その報酬として現金一万円を供して、総代である被告人平井兵吉の職務に関して賄ろを供与し

(2)  同年七月二四日午前一〇時三〇分頃、前記中部小学校講堂において、被告人高屋一に対し、右理事選挙に際し、前示工藤長谷丸に投票され度い旨請託をなし、翌二五日午前九時頃、被告人高屋一の肩書居宅において、その報酬として現金一万円を供して、総代である被告人高屋一の職務に関して賄ろを供与し

第二、被告人平井兵吉は

(一)  同年七月二四日午前一〇時三〇分頃、前記中部小学校講堂において、被告人佐藤広より、右理事選挙に際し、前示初川賢哉に投票され度い旨請託を受け、同日午後一時頃、右泉橋附近路上において、その報酬として供されることを知りながら、現金一万円の供与を受けて、総代である自己の職務に関して賄ろを収受し

(二)  同月一五日午後八時頃、肩書自宅において、前示佐藤東より、右監事選挙に際し、自己に投票され度い旨請託を受け、その報酬として供与されることを知りながら、現金千円を受取つて賄賂を受け、右監事選挙の投票をなし

第三、被告人高屋一は

(一)  同年七月二四日午前一〇時三〇分頃、前記中部小学校講堂において、被告人佐藤広より、右理事選挙に際し、前示工藤長谷丸に投票され度い旨請託を受け、翌二五日午前九時頃、肩書自宅において、その報酬として供されることを知りながら、現金一万円の供与を受けて、総代である自己の職務に関して賄ろを収受し

(二)  同年七月一五日午後五時過頃、肩書自宅において、前示佐藤東より、右監事選挙に際し、自己に投票され度い旨請託を受け、その報酬として供与されることを知りながら、熊谷一郎を介し、現金千円を受取つて賄賂を受け、右監事選挙の投票をなし

第四、被告人小出甚作は

(一)  分離前の相被告人工藤長谷丸と共謀の上

(1)  同年七月二〇日頃の午後六時頃、同町大字竹矢五九五番地の二藤塚久方において、同月二四日より総代に就任すべき同人に対し、右理事選挙に際し、前示工藤長谷丸に投票され度い旨請託をなし、その報酬として現金五千円を供与して、賄賂を以て右理事選挙の投票をなさしめ

(2)  同年七月二四日午前一〇時三〇分頃、前記中部小学校講堂附近において、被告人佐藤広に対し、右理事選挙に際し、前示工藤長谷丸に投票され度い旨請託をなし、同月三〇日頃の午後二時頃、前示工藤長谷丸方において、その報酬として現金五万円を供して、総代である被告人佐藤広の職務に関して賄ろを供与し

(二)(1)  同年七月一五日午後三時頃、肩書自宅において、前示工藤長谷丸より、右理事選挙に際し、自己に投票され度い旨請託を受け、その報酬として供与されることを知りながら、現金五千円を受取つて賄賂を受け、右理事選挙の投票をなし

(2)  同日午後四時過頃、肩書自宅において、前示佐藤東より、右監事選挙に際し、自己に投票され度い旨請託を受け、その報酬として供与されることを知りながら、現金千円を受取つて賄賂を受け右監事選挙の投票をなし

たものである。

判示事実は

〈証拠省略〉

を綜合してこれを認定する。

当裁判所の見解

一、土地改良法第一三条は「土地改良区は法人とする」と規定しているが、これが公共組合である公法人であるか、どうかにつき、一言触れてみることにする。

一、講学上公共組合とは一定の組合員をもつて構成される公共団体であり、公法上の社団法人であると定義づけられている。公共組合は地方公共団体のように一定の地域内のすべての住民からなるものではなく、法定の資格ある組合員の結合からなる社団であり、又地方公共団体のように広く一般的な地方公共の利益を目的とするものではなく、限られた特殊の事業を目的とするものである。そしてそれが公共組合たる公法人と断ずるには、それなりの実定法上の公法的特色が認められるものでなければならないと解されている。

一、そこで土地改良区がかかる公法的特色が認められているか、どうかを吟味してみるが、(1) 先づ第一点として、土地改良法第一条には「この法律は農用地の改良、開発、保全及び集団化に関する事業を適正かつ円滑に実施するために必要な事項を定めて、農業生産の基盤の整備及び開発を図り、もつて農業の生産性の向上、農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資することを目的とする」「土地改良事業の施行にあたつては、その事業は、国土資源の綜合的な開発及び保全に資するとともに、国民経済の発展に適合するものでなければならない」と規定し、その目的とするものが公共的公益的な業務であつて、目的が国から与えられていること、(2) 次に第二点として、その設立については同法第一〇条により国の機関たる都道府県知事の認可によつて成立し、設立が国の意思に基くこと、(3) 次に第三点として、同法第一一条によれば「土地改良区の地区内にある土地につき第三条に規定する資格を有する者はその土地改良区の組合員とする」と規定し、加入が強制されていること、(4) 次に第四点として同法第六七条によれば「総会の議決による解散は都道府県知事の認可を受けなければならない」と規定し、任意の解散が制限されていること、(5) 次に第五点として同法第一一八条、第一一九条、第一二〇条によれば他人の土地又は工作物に立入り調査し、障害物の移転除去取毀し等を行い、急迫の災害を防ぐため必要があるときは他人の土地を一時使用し又はその土石竹木その他の現品を使用収用ができ、公用負担の特権があること、(6) 次に第六点として、同法第一〇二条、第一〇七条、第一〇八条、第一一一条によれば土地所有権等の強制的な交換分合、これに伴う金銭的清算強制を行う換地処分及び換地清算の権限があること、(7) 次に第七点として、同法第三六条、第三七条によれば、土地改良区は定款の定めるところにより、その組合員に対し、金銭夫役現品の賦課、徴収、加入金の徴収、過怠金を課することができるのみでなく、同法第三九条によれば行政上の強制徴収を行う等或る範囲の国家的権限が与えられていること、(8) 次に第八点として、同法第一三二条ないし第一三六条によれば、報告の徴収、検査、違反行為に対する措置、解散命令、決議選挙等の取消等、国の特別の監督を受けていること、以上の規定を併せ考えると、土地改良区は公共組合である公法人と断ずべきである。

一、かように土地改良区が公法人であり、その目的が同法第一条所定の如く公共的公益的であるので、その業務は公共性のある業務というべく、又組合員により選出された総代、総代会によつて選出された理事監事が公共的業務に従事する者に該ることは明らかというべきである。

一、次に土地改良区の総代理事監事が公共的業務に従事する者であるとすれば、これ等の者は公選による公共的業務に従事する者に該るか、どうかである。

一、土地改良法第二三条は総代の定数、被選挙資格、選挙施行の方法管理等につき規定しているが、その第四項によれば、総代選挙は政令の定めるところにより都道府県又は市町村の選挙管理委員会の管理のもとに、直接、平等及び秘密の原則によつて行うものとすると規定せられ、又理事監事の役員の選挙は同法第一八条において、理事監事の定数、選挙施行の方法管理等を規定しているが、その第三項によると役員は定款の定めるところにより総会で選挙する、ただし、定款の定めるところにより、総会外で選挙することができる、その第六項に役員の選挙は無記名投票によつて行う、投票は一人につき一票とする、その第八項に役員の選挙においては選挙ごとに選挙管理者、投票所ごとに投票管理者、開票所ごとに開票管理者をおかなければならない等と規定しているので、土地改良区の総代役員は土地改良法および同法に基き定められた定款により選出された公共的業務に従事する者であつて、旧刑法第二三四条所定の公選に該るというべきである。

一、弁護人は旧刑法第二三四条の規定は既にその効力を失つていると主張し、その理由を縷々陳述するが、公職選挙法の適用せられる衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の議会の議員、その長の選挙、および公職選拳法の準用せられる選挙(これを例えば農業委員会の委員、漁業調整委員会の委員の選挙の如し)これ等の選挙を除く若干の選挙における事犯については、刑法施行法第二五条により、該規定が今なおその効力を有することは、昭和二四年四月六日最高裁判所大法廷判決に徴し明らかである。

一、次に弁護人は、司法警察員、検察官によつて被告人等が何人に投票をなしたかにつき、被告人等の供述調書が作成され、公判審理においても誰に投票したかについての尋問がなされているので、これはいずれも憲法第一五条第四項の禁止を犯したものであるから、該供述調書、公判調書は無効であり証拠能力がないと主張する。

一、考えるに、憲法第一五条第四項には「すべて選挙における投票の秘密はこれを侵してはならない、選挙人はその選択に関し公的にも私的にも責任を問われない」と規定しているが、該条項は第三項を受けて「成年者による普通選挙」における「公務員の選挙」に関する規定であつて、それは一切の投票を含むものではない。既に国会における投票の如き特に投票者の責任を明らかにする必要のものについては、公開投票によることを妨げないものとさえされている(衆議院規則第一五二条、第三条第二項、参議院規則第一三八条、憲法第五七条第三項)。それで前示最高裁判決も旧刑法第二三四条を適用するに当つては憲法第一五条第四項の趣旨に従い、何人に投票したかの審理することは許されないものと解すべきであると判示し、捜査官、裁判官の注意を喚起したものと考えられる。それで旧刑法第二三四条所定の公訴事実を審理するにあたつては捜査官、裁判官は黙秘権のある被疑者被告人に対し、自己が有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる証人に対し、憲法の趣旨に従い何人に投票したかの陳述を求めることができないことは勿論であるが、被疑者、被告人、証人が自ら進んで任意に供述した場合はその供述に証拠能力がないとは、遽に断じ得ないものと思う。(なお此処で一言し度いことは、総代の選挙については土地改良法第二三条第四項に「前項の規定による選挙は、政令の定めるところにより、都道府県又は市町村の選挙管理委員会の管理のもとに、直接、平等及び秘密の原則によつて行うものとする」と規定しているにも拘らず、役員の選挙については同法第一八条第六項、第七項に「役員の選挙は無記名投票によつて行う」「投票は一人につき一票とする」と規定し、総代選挙の如く、秘密の原則によつて行う旨の規定がないことである。「無記名投票」即「投票の秘密」でないとすれば、旧刑法第二三四条の適用がある本件土地改良法所定の役員選挙に迄、憲法第一五条第四項の趣旨に従わねばならないのか、この点些か疑問がないでもない。)

一、次に弁護人は土地改良法所定の贈収賄の規定は刑法の公務員等の贈収賄の特別規定であり、その保護法益を異にし、土地改良区の経済的業務の執行に関する贈収賄に限りこれを適用すべきであつて、本件の如く土地改良区の総代役員選挙の人格構成行為にはこれを適用すべきでないと主張する。

一、しかし刑法所定の公務員等の贈収賄の保護法益が公務員等の職務行為の不可買収性、公務員等の職務の純粋性ないし公務員等の義務の不可侵性であることは通説の認めるところであり、土地改良法所定の総代役員の贈収賄の規定も亦これと軌を一にするものであつて、何等差異があるものとは思われないし、土地改良法第一四〇条第一項に規定する職務という概念から人格構成に関する行為を除外しなければならない合理的理由も発見することができないから、弁護人の主張は採用できない。

一、検察官は第一回公判期日において次のとおり釈明しているので、検察官の考え方につき吟味を加えて置き度いと思う。

一、検察官は本件土地改良区総代である被告人等が昭和三九年七月二三日前総代の任期満了により翌二四日新総代に就任したので、この時初めて総代の身分を取得したと認められ、七月二三日以前に授受された金員については土地改良法第一四〇条違反の罪は成立しない。ただし、前総代から引きつづき再選された総代岡松直、同河野幸雄、同奈須照、同谷崎政信の四名に対し供与されたものは同条所定の罪が成立すると主張する。

一、しかし、新総代につき同年七月二三日以前に授受されたものにつき、同条所定の罪が成立しないとするならば、再選総代についても、次のとおりの理由により、同条所定の罪は成立しないと解すべきが筋である。何となれば同年七月二四日施行された本件土地改良区の理事監事の公選は前総代の資格において施行されたものではなく、新総代の資格において施行されたものであつて、賄賂と賄賂が供与された当時の前総代の職務行為との間に、給付反対給付という対価関係が認められないからである。

一、以上のとおり検察官の立論は誤つているが、他の理由により同年七月二四日総代就任前の現金の授受につき贈収賄が成立しないか、どうかにつき、考察を進めてみることにする。

一、被告人等は同年七月一五日施行された総代選挙において即日当選決定し、もつとも立候補届出締切日が同年七月五日であり、所謂無投票地区の総代立候補者は翌六日に総代になることが確実になつたので、将来ある条件の下に、本件に即していえば、日時の経過により当然同年七月二四日より新総代としてその職務行為を行い得る地位にあつたのであるから、同年七月二四日以前においても、将来行うべき新総代の職務行為に関し、授受された金員は賄賂というべく、土地改良法所定の贈収賄罪が成立することは明らかというべきである。

一、このことは「葉たばこ収納に際し、専売公社地方局長の任命により鑑定人としての職務を執行する権限を有する同公社支局技術課長がその具体的職務の執行を予期し、これに関し不正の利益を収受したときは、たとえ、右具体的職務の執行が地方局長の任命という条件にかかつていたとしても収賄罪の成立を妨げるものではない」とする昭和三六年二月九日の最高裁判決よりも推論することができるところである。又学者特に「公務員賄賂罪の研究」をものした美濃部達吉博士の所論によれば「賄賂罪の対象としての職務行為は、必ずしも賄賂の授受、約束又は要求をなした当時に、公務員が現にその職務行為を行い得る地位にあることを要するものではなく、将来或る条件の下に、その職務行為を行い得る地位にある場合は勿論、仮令現在はその職務を担任して居らぬとしても、将来その担任を命ぜらるることの有り得べきことが予想せられる場合に、その将来担任することあるべき職務行為に関して賄賂を収受するのも、収賄罪を構成することを妨げない」というのであるから、この考え方は本件にも類推せらるべきものであると思う。更に昭和一六年改正による刑法第一九七条第二項の規定も亦、ここに参照せらるべきであろう。

一、そこで当裁判所は、同年七月二三日にいたる迄に授受された金員についても土地改良法所定の贈収賄罪が成立するものと解するが、検察官においてこれ等につき既に公選賄賂投票として訴因を構成し起訴しているので、敢えて土地改良法所定の贈収賄の訴因追加を命ずる必要がないと考え、かかる措置を採らなかつたのである。ここに一言附加して置き度いと思う。

法律に照すと、(一)被告人佐藤広の判示第一の(一)の(1) (2) (3) の土地改良法違反の点は同法第一四〇条第一項前段に、判示第一の(一)の(2) (4) の公選賄賂投票の点は刑法施行法第二五条第一九条第二条第二〇条旧刑法第二三四条に、判示第一の(二)の(1) (2) の土地改良法違反の点は同法第一四一条第一項に各該当し、判示第一の(一)の(2) は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五四条第一項前段第一〇条に則り、重い土地改良法違反の収受罪の刑に従うべく、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、判示第一の(二)の(1) (2) につき、それぞれ所定刑中懲役刑を選択したうえ、同法第四七条第一〇条を適用して重い判示第一の(一)の(1) の土地改良法違反の収受罪の刑に併合罪加重し、その刑期範囲内で同被告人を懲役六月に処し、(二)被告人平井兵吉、同高屋一の判示第二の(一)、判示第三の(一)の土地改良法違反の点は同法第一四〇条第一項前段に、判示第二の(二)、判示第三の(二)の公選賄賂投票の点は刑法施行法第二五条第一九条第二条第二〇条旧刑法第二三四条に各該当するところ、同被告人等の以上の所為は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文但書第一〇条を適用して、重い判示第二の(一)、判示第三の(一)の土地改良法違反の収受罪の刑に、それぞれ併合罪加重し、その刑期範囲内で同被告人等を懲役二月に各処し、(三)被告人小出甚作の判示第四の(一)の(1) 、(二)の(1) (2) の公選賄賂投票の点は刑法施行法第二五条第一九条第二条第二〇条旧刑法第二三四条(共謀につき刑法第六〇条)に、判示第四の(一)の(2) の土地改良法違反の点は同法第一四一条第一項(共謀につき刑法第六〇条)に各該当するところ、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、判示第四の(一)の(2) の罪につき所定刑中懲役刑を選択したうえ、刑法第四七条本文但書第一〇条に従い、重い判示第四の(一)の(2) の土地改良法違反の供与罪の刑に併合罪加重し、その刑期範囲内で同被告人を懲役四月に処し、(四)諸般の情状に鑑み刑法第二五条を適用して本裁判確定の日より被告人佐藤広、同小出甚作に対し二年間、被告人平井兵吉、同高屋一に対し一年間、右各刑の執行を猶予し、(五)被告人佐藤広が収受した現金合計一五万円中被告人平井兵吉、同高屋一に供与した現金合計二万円を差引いた現金一三万円、被告人平井兵吉、同高屋一が収受した各現金一万円はいずれも没収することができないから、土地改良法第一四〇条第四項に則り、被告人佐藤広よりその価額金一三万円、被告人平井兵吉、同高屋一よりその価額各金一万円を追徴し、(六)訴訟費用中国選弁護人後藤博に支給した日当分は刑事訴訟法第一八一条第一項本文に則り被告人平井兵吉の、証人内田長栄に支給した分は同法条により被告人小出甚作の各負担とする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 富川盛介)

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